松たか子主演「告白」映画レビュー/と、主人公の気持ちを選びなさい」が四択の日本の教育

つれづれエッセイ

こんにちは。

今飛行機の中で、この記事を書いています。

最近飛行機に乗るときは、なぜかいつも隣が空席でラッキーです。

ANAの毛布の生地の色は手触りがするすると心地よく、私の好きな深い青色。

ロシアの空の上で、WIFIもつながず寝るか食うか映画見るかしかできない状況。

つまりいい感じってことです。用事に埋もれない時間、プライスレスです。

ANA機内の映画鑑賞ラインナップ

機内での楽しみの一つといえば、映画鑑賞ですよね。

最新ハリウッド映画からキッズアニメまで豊富に揃う機内のラインナップですが、その中で松たか子主演のミステリー映画「告白」という邦画を観ました。

この映画は、湊かなえが原作のもので、確か10年前ほどの映画だったはず。当時一度観ましたが、あまりにも衝撃で、細かい内容を忘れても、その衝撃だけは形を変えずにずっと心に残っていて。

機内テレビの映画ラインナップをカチカチとスクロールしていていた中「告白」があったので「新作映画もいっぱいあってそっちも見たいけどなー、やっぱり「告白」が気になるなー」ってことで、10年ぶりの二回目を見ることにしました。

「告白」の冒頭のあらすじ

中学校教師である松たか子が、ホームルームで語るところから話は始まります。

ちなみに中学1年生、13才の生徒たちの担任。

騒がしい教室で語り始める彼女。突然「教師を辞めることにしました。」と淡々と言い放ち、生徒たちは大喜び。

生徒を子ども扱いしないようにという意図で、敬語で距離を置き接していた彼女は冷たく見えたようで、生徒にあまり好かれていなかったような描写がなされています。

実は彼女の小さな娘さんが 、数ヶ月前に事故死で亡くなったらしく、その時のことを語りだした彼女。それがかなり生々しく、細部まで語られるので、生徒たちは徐々に凍りついていきます。

そしてついには「事故死ではなく、娘は殺されたのです。このクラスの生徒に。」と告白。

完全に怯える生徒も多い中、それでも中学一年生、思春期真っ只中なので、面白がってメールで「犯人誰~???」と恐怖に駆られながらも、興味本位半分でメールをまわすクラスメイトたちも。

「13歳は人を殺しても少年法で守られる、だから私は、私の方法で、命の重さを知ってもらおうと思いました。」そう言う彼女は、HIVに感染した夫の血を犯人である男子生徒2人の牛乳に混ぜた、と言います。

そこから、彼女の復讐と、それによって徐々に壊れていく生徒たち、各登場人物の心の闇が描かれていきます。

数人の語り手がいる物語の展開方法が好き

教師である松たか子はシングルマザーになった理由、娘をどれだけ愛していたかなど、自分の心情やこれまでの過程まで語りますが、その後最後まで彼女目線で物語は進む・・・のではなく、途中でクラスの女生徒に目線が切り替わります。

女生徒の「告白」(語り)が始まる。

それまで教師である松たか子が話していたストーリーから、他の登場人物の心情などは想像することはできましたが、彼女の語りが始まると、教師の語り口からは想像しきれなかった、また違う側面が見えてきます。

その後も、語り手は次々と変わっていきます。

犯人である男子生徒A、Bも、自らの心情を語りながら、映画はストーリーを追っていきます。

私はこの映画が好きな一番の理由は、各登場人物の語りがそれぞれあるところです。

世にある物語の大半は、主人公一人の一人称からの目線や、もしくはナレーション的に書き手からの目線、いずれも一人からの目線が多いですよね。

 他の登場人物の気持ちは、行動や表情、また悲しい時は雨が降る、とか情景描写によってあらわされることが多いかと思います。

それは一人からの目線の語りでないと、物語は収拾しづらいからです。特に時間に限りがある映画なんかは、なかなかこの展開の仕方が難しい。実際書き手のプロからしても、卓越したスキルが必要だそうです。

ただ時々、一人からの目線の語りではなく、今回のように複数人の目線から語られる「物語」にも出会います。わたしはそれが好きなんです。

村上龍さんの小説「最後の家族」もそうです。同じ場面を繰り返し描写し、その上で、各回で父、母、子の登場人物全てが自分の気持ちを吐露します。

人の気持ちを決めつけなくて良い、多角的な視点

私がなぜ「複数人の目線から語られる「物語」が好きなのかというと、「登場人物の気持ちが、想像通りではないことがわかるから」です。今回の「告白」はミステリー映画なので、より想像を裏切るようにはできていますが、これはミステリー物語でなくても、実生活でもありうることです。

人の気持ちを決めつけなくて良い余白があるから好きです。

多角的な視点からみれるから、好きです。

私は決めつけられるのがすごく嫌いです。

想像通りにはいかないのが人間だけれど、決めつけられると、自分が人であることを否定されているような気がするからです。

もっと繊細で、一辺倒にはいかなくて、物語を乱すような矛盾もあって。それが人間だと思うのです。

人間が描かれている物語が読みたいのです。

ところで、つまり何が言いたいか、というと、

日本の教育の「国語のテスト100点って良いことなの?」

このことを、この映画を見て思い出したことを言いたいんです。

多角的な視点の展開があり、余白があるこの映画を見て、思ったのです。

国語のテストの形式、ひいてはそれによって取れる「100点」に疑問を持ちました。

日本の国語教育は、多角的な視点があまりないのではないか。

 

ちなみに私は、国語が最も得意教科でした。なぜか勉強しなくても98点か100点のことがほとんどでした。

「この物語を読んで、当てはまる主人公Aの気持ちを選びなさい」みたいなやつ。それで、私は、いつも教育委員会が決めた主人公の気持ちの正解を、選ぶことができていました。

私は当時そのことに誇りを持っていましたし、多分どや顏だったし、自分が正解を出していることを肯定されていることに、何の疑いもありませんでした。

でもそれってすごく怖いことでもあると、今更気づいたんです。

人の気持ちに正解はない

最近海外に出て、正解が一つではない文化を目の当たりにするようになり、少しずつ「そういえば国語ってこんなんだったなー。」と思い出すようになりました。

もし国語の教科書に、この「告白」のような主語が複数あったなら、そういう目線で考えられるのが当たり前になり、いいかもしれない、と思ったりしました。

日本の教育は、決められた正解を選ぶことが良しとされている。

ペーパーテストで、選択系が多く、記述の割合はかなり少ない。

だからなのか、記述で「自分の意見を書くのが苦手」な人がとても多い。

フランスに来てから、常識というものが測りにくい環境で、マジョリティなんかない環境で、もはやマジョリティに属する人なんかいなくて、つまり全員がマイノリティで。

 「マジョリティが選ぶであろう他人の気持ち」に正解・不正解をつける、そんなペーパーテストなんて意味がないんじゃないか、と思い直してきました。

 今私が日本の国語のテストを受けたら、疑問・不満・が出て、選択肢4つともにチェックをつけて、採点として、多分30点くらいだと思います。反抗期。(笑)

自分で、記述欄を作ってしまうかも。

大人に都合の良い、指示待ちの子供を作る教育を壊したい

知り合いが小学校の先生をやっていて、彼女がこんなことを言っていました。

「枠の中に入れる教育に疑問をずーっと感じていて。こっちのコントロール下のもと、大人の都合のよい子どもがつくられる環境に嫌気がさしてきて。そして自分もそんな環境を生み出してることにゾッとしました。子どもたちの学びも常に指示待ちだったり。そうして色んなことを諦める子をつくってしまったり。」

先生もそんな風に思っている人がいるんだ、と思いました。

「自分も勝手にレッテル貼られたり、能力で贔屓される学校が嫌いで反抗的な子だったんです。だから教師になったのに。」って。

テストの記述欄を増やすと、決めつけが減る?

このブログの他記事でも、再三「選択肢を増やしたい」と書いていますが、今回もそれを書いて、そのためにはどうすればいい・・?と思いましたが、

一つ小さく見えて、大きな一歩として、テストの記述欄をもう少し増やせばいい。かな?

だって、選択肢を選んでそれにマルをつけられてしまったら、それが正解だ、って思いますよね。

マルをつけてもらった自分を肯定したいですよね。

選択制で一つだけが正解なのではなくて、記述がもっと増えたら。

そして、記述欄も決められた判断基準によって正解を出すのではなく、その人なりの理由が書けていれば、もう花マルでいいんじゃないかな。

そうしたら、「私はこの回答をしたけれど、私なりの理由がちゃんとあったからマルをもらえた。隣の席のBちゃんも、全然回答が違うけれど、きちんと彼女の理由が書かれてあったからマルをもらってる!」

なんか、いい感じになりそうじゃないですか??

日本の教育を担っている方々、教育委員会の方、ご検討のほどよろしくお願いします・・。

「告白」の映画を見て、そこから国語のペーパーテストの記述欄を増やしたい・・と考えた空の旅(笑)、有意義だったと思います。たぶん。

では、またね。

Saki

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パリ在住のライター

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パリ在住のジャーナリスト、ファッションバイヤー。
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